チベットタンカとチベット医学

  /お話:小川 康・チベット医、馬場崎研二

浅間温泉
医王山神宮寺本堂

Babasaki Kenji
Tibetan Thangka

チベット語はまったくわからなかったし、必要なかったです、
絵ですから。観ていればわかるんです。師匠の真似をするこ
とでタンカを学んでいったんです。普通のチベット人の弟子
たちとは違ったやりかたでしたね。それに比べると小川さん
は本当に正当なやりかたで、チベット人と同じやりかたでチ
ベット医学を学んだ方です。

ギュー・スムという試験があって、医学生はこの8万語におよぶ
学典(四部医典)を一字一句まちがわずに完璧に暗誦することを
求められます。衝撃です。人間がこんなことをできるのか!って。
でもそれを自分の目標に決めたら、ひたすら繰り返して2008年に
合格しました。馬場崎さんが人間技じゃない!って思ってから30
年間、タンカをお手本どおりに、いわば模写しつづけてきたのと、
まったくおなじだと思うんです。
われわれアムチは薬師如来さまの宮殿に生えている薬草を採集し
て、この経典どうりに処方します。チベットでは今でも千年前と
同じやり方で、病気を平癒しているのです。と言うか、千年の間
伝統の処方を続けてきているのです。

小川 康
富山県出身、1970年生まれ。東北大学薬学部卒業。薬剤師。
2001年チベット圏外の外国人としては初めてメンツィ・カン
(チベット医学暦法学大学)に合格。2008年には8万語におよ
ぶ四部医典(ギュー・シ)の暗誦試験(ギュー・スム)を達成。
2009年インターンを終了し、正式なチベット医・アムチとして
認定される。帰国後、小諸市にアムチ薬房を開設。チベット医
学のみならず、日本古来の伝統医療の紹介・普及に努めている。

小川アムチ薬房
 http://sites.google.com/site/amchiyakubou/home

ダラムサラで過ごしているうちに、気がついたら一生懸命
に勉強していましたね。
メンツイ・カン(チベット医学暦法学大学)の入試という
のは4年にいっぺんしか開催されない、オリンピックみた
いなもんですね。チベット中の秀才が集まってくる大学で
自分が入学するなんて絶対無理と思っていました。たまた
ま2001年の5月に開催されたので、まあ帰国の記念に
受けてみようと思ったわけです。受けると決めてからはも
ちろん勉強しました。気がついたら本当に必死になって勉
強をしていました。