この作品は私の師チャンパ・ラが亡くなった当時、未完成だったものを彼の遺品として、残された妻から渡されたものである。彩色だけは終わっていたが、残された半分ほどの過程を私が手掛け、完成させた思い出深いタンカである。このタンカの様に、師が亡くなった後には、四、五枚の描きかけのタンカが残されており、私はそれらすべてを二、三年かけて完成させ、すべてを依頼主の手元に届けることができた。それまでは、与えられてばかりいた自分ではあったが、これでやっと師への少しでもの恩返しができたようだ。
さてこのタンカ、描かれているのはチベット仏教の系統を表す尊師たちや尊像たちである。中央の蓮華座に座しているのが釈迦牟尼。その両脇侍に、黄色の体の文殊と弥勒の両菩薩。向かって右の文殊菩薩の後ろには龍樹を頂点とする中観派を継承してきた学僧たち、左には無着を最上位に唯識派の学僧たち。釈迦牟尼仏の真上には、持金剛仏を頂点に密教を継承してきたラマ達、さらには、釈迦牟尼仏の下に尊師・守護尊・諸仏・菩薩・独覚・声聞・ダキーニ・護法尊達の集会が描かれている。それらの下には、これらの諸尊を守るための四天王と梵天・帝釈天が控え、一番下の両側には信仰者としての僧侶と、この集会に宇宙全体を捧げる意味で曼荼羅を供養している僧侶の姿がある。
簡潔に言えばこのタンカは、チベット仏教が顕教の中観派と唯識派、それに密教の相承が統合されて成り立っているという事を表している。
Opus-103 1989 (72 x 49 cm)